皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
日経新聞は、7月9日に『1日2万4000個売れたおはぎ 宮城・秋保温泉のスーパー「さいち」のタイトルで記事を掲載しました。
本日は、この記事に出てくる「主婦の店 さいち」について述べます。
宮城県仙台市の秋保温泉にある、わずかコンビニほどの規模の地場スーパー「主婦の店 さいち」。ここで1日に5,000個以上、休日には1万個近くも売れる名物が「おはぎ」です。
実は15年前にも、本ブログでその驚異的な集客力について触れたことがあります。それから長い年月が経ち、時代はデジタル化や物価高騰など大きく変化しましたが、さいちの輝きは衰えるどころか、さらに強固なブランドを築いています。
当該ブログのURLは、以下の通りです。
今回は、「中小企業の販路開拓・集客支援」というプロの視点から、改めて「さいち」が変わらず勝ち続けているやり方について考えます。
1. 販路を「広げない」という最強の地域密着スタイルの堅持
多くの企業は、ヒット商品が生まれると「多店舗展開」や「全国への流通網拡大(EC展開など)」を模索しがちです。しかし、さいちは500社以上の大手スーパーからの視察や研修を受け入れながらも、頑なに「秋保温泉の1店舗経営」のスタイルを崩していません。
中小企業にとって、急激な販路拡大は「製造コストの上昇」「品質のブレ」「管理プロセスの複雑化」など、自社のコントロール不可能なリスクを抱える原因になります。さいちはあえて販路を広げないことで、以下の経営メリットを最大化しています。
「目的来店性」の創出: 「そこに行かなければ買えない」という圧倒的な希少価値が、県外からも顧客を呼び寄せる強力な動機(トリガー)になっています。
確実な需要予測とロス低減: 拠点を1つに絞ることで、日々の需要が読みやすくなり、製造ロスを最小限に抑え、高利益率を維持しています。
2. チラシ・特売なしで顧客を呼び寄せる「プロダクト三原則」
さいちでは、原則としてチラシの配布や特売を行っていません。販促費(集客コスト)を極限まで削りながらもファンが絶えない理由は、徹底的に磨き上げられた「商品力(プロダクト)」にあります。
① 徹底した「顧客目線」の味(甘さの絶妙なコントロール)
「甘さ控えめで飽きのこない味」は、言うのは簡単ですが、継続するのは至難の業です。レシピに頼らず、職人の感覚で毎日炊き上げるあんこは、素材(北海道産小豆、宮城産もち米など)の味を最大限に引き出しています。「また食べたい」と思わせるリピート性の高さこそが、最大の集客ツールです。
② 添加物一切なしの「誠実さ」というブランド
味付けは砂糖と塩のみ。余計な保存料や添加物を一切使わない姿勢は、食の安全に対する現代の顧客ニーズに完全に合致しています。これは、競合が容易に真似できない強力な差別化要素となっています。
③ 「安くておいしい」を維持する原価・価格設計
昨今の物価高騰により価格改定は余計なくされたものの、「できるだけ安価に提供する」という方針はブレていません。チラシ代や無駄な流通マージンをカットした分を、原材料費の維持と顧客への価格還元に充てる構造は、まさに中小企業が目指すべき理想的なコストシナジーです。
3. 地域共生による「にぎわいのエコシステム」
さいちのおはぎは、単なる一スーパーの看板商品に留まらず、秋保温泉街全体のにぎわい創出に寄与しています。
観光客が「さいちのおはぎ」を目的に訪れ、その足で温泉街を散策し、旅館や他の飲食店にも経済効果が波及するという「地域共生型のエコシステム」が確立されているのです。
自社の商品を、単なる「点」として売るのではなく、地域のインフラやストーリーという「面」として位置づける。この視点こそが、これからのローカルビジネスにおける販路開拓の鍵となります。
まとめ:持続可能な経営を目指す中小企業へのメッセージ
15年前に私が視察した際の衝撃は、時代の変化を経てさらに確信へと変わりました。
販路を無理に広げるのではなく、「今ある1拠点の価値を極限まで高めること」。そして、流行のマーケティング手法に振り回されず、「顧客が本当に求めている品質と誠実さにリソースを集中すること」。
自社にとっての「おはぎ」にあたる、他社に負けないコアコンピタンス(核となる強み)は何か?
改めてそれを見つめ直すヒントが、秋保温泉の小さなスーパーに詰まっています。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本雅暁
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